秋鵠空(さとあき) 傘
秋鵠空(さとあき)
秋鵠空(さとあき) 洋傘で黄昏水に溶かす接吻 かどに菫が育てる空は
秋鵠空(さとあき) 洋日傘ふと 九段の風の遠い恋音乗せカノン指揮棒振る空は
ひーろ 常温の暮らしの中にあのひとの傘だけずっと凍てついている
紺野水辺 花びらはサービスですと春風がビニール傘を揺らして通る
五月雨薊 気まぐれなきみが残していったものビニール傘と枯れたサボテン
似鳥 レントゲン写真に写る僕たちはありふれている透明な傘
千吉 冬の浜壊れた傘を詠んだ詩人ゴミはその儘詠みっ放し
羹鱠 霧雨を 蛇の目片手に 佇めば 真白の手毬 君にあるかな
かたつむり 