
名前


君に問う 群れ 持たず 名前ももたぬ 我が身ゆえ 気持ちに 押され ただ 為すべきと 我は知る むれもたぬ 名前ももたぬ この身には ひとつもできぬ 知らぬ 存ぜぬ

「飼っていたインコの名前を言ってみろ」オレオレ詐欺に詰め寄る父は

誰にとっても大切な名前私が私であるための名前

教科書に油性で書いた氏名欄みたいにゆっくり死んでいくだろう

虚偽という 名前の鎖 繋がれて 無明に怯える 斑の犬よ

その名前呼ぶとき君はいつもより春のひかりの表情(かお)になるよね

告げられた君の名前をもう一度抱き締め直すように呟く

水槽の孫のメダカに餌をやるこのごろ名前考えている
