千吉 思
千吉
あらいぐま もう声も思いだせない如月の空にはしずかな白鯨ばかり
羹鱠 思ひ取る 百世ふるとも 忘れじと 八重に成りける 黄金の稲穂
羹鱠 うちつけに 移りし現世 思ふかな 大志を誓う 四度の菖蒲
羹鱠 朝ノ凪 忍ぶ思ひを 偲ぶれば 波打つものは 我が身なるかな
羹鱠 月の夜は 忍ぶ思ひを 偲ぶかな 雲間に見ゆる 初の水無月
羹鱠 九夏の夜 寝入り難しと 過ごすとも まこと熱きは 君への思ひ
羹鱠 秋風に 流るる処暑や 涼しかる つきぬ思ひぞ おどろかれぬる
羹鱠 雪化粧 ふるも消ゆるか 然れども 八重の思ひに 限りはあらじ
凪海 