鈴木ベルキ 抱
鈴木ベルキ
柔らかい時計 優しさとチョークで荒れた指先に触れえぬ夜は鞄を抱いて
塩本抄 いろはすをふたつ掲げて立っている木陰のひとよ抱きしめにいく
塩本抄 軒下で揺れる硝子がみずいろの夏を抱えてまあるく歌う
木村槿 種を買うつもりで林檎を買うきみをさらうつもりで抱きしめている
ひーろ 抱きとめる、わたしに向かってくる風はきっとさみしい風だろうから
土井みほ がんばって三回唱えたお願いを抱えて星は海へと落ちる
袴田朱夏 乳離れせぬ一歳を真夜に抱き妻うつくしく稜線と成る
口無しななし 寂しさが寒さに混じって溢れてく布団抱いても震え止まらず
木村槿 