かなた小秋 月
かなた小秋
土井みほ 溶け出した宇宙を両手で受け止めて涙まみれで目覚める月夜
御影堂 歩 先生が来たぞと叫べば一斉に蝉が鳴き止む八月の終わり
袴田朱夏 荒れた田に等しく夜が降りてきて星を残せばもう霜の月
森山緋紗 三日月の端にあなたをぶら下げて忘れることで許さうとする
たかなし彩珈 もう二度と会えない気がして「またあした」 ふと呟いた三月の暮
木村槿 これが火か炎なのかを決めるのはぼくだったのだ ばかでかい月
だいだい ボーナスの出る三月が辞めどきと爪を研ぎおり外資の我ら
悠太郎 水たまりひとつひとつに浮かぶ月 ぜんぶあなたでわたしのぜんぶ
千代田 環 