塩本抄 母
塩本抄
塩本抄 ゴミ出しの帰りに空を吸う 母と離れなければならないと思う
浜辺の釣り人 空襲に靴履かず逃げ生き延びた おてんば娘は母になりぬ
すみ 青い日の 祖母の姿を 見てるよな 変わらなくある 浜茄子の海
ひーろ 常夜灯みたいな母の声がしてここは夜だと気づいてしまう
ほのふわり ゆらゆらと新茶しずかに冷めてゆき祖母は今日さえ忘れてしまう
ふにふにヤンマー 地球など誰が守れと産むものか去り際に母の声は震えて
ふにふにヤンマー 不意の雨頬に受ければたらちねの母はいつから泣かなくなった
梅鶏 母親の中では僕は幼子で卵ボーロが今でも届く
北大路真彦 