音忘信 生
音忘信
塩本抄 図書室を吹き抜ける風ぼくたちの生きる速度じゃ追いつかないね
塩本抄 ひとりでにプランターから生えてきた二代目トマトのなんたる朱よ
塩本抄 まだ意味が生まれる前のだいすきを杖に父へと歩き続ける
塩本抄 学童に六年生がひとりゐて放課後のプロらしく書を読む
浜辺の釣り人 空襲に靴履かず逃げ生き延びた おてんば娘は母になりぬ
木村槿 種の保存 ぼくらはリストにないはずの種を生きている理由もなしに
水科あき ゆびがまだ動いて生に縋るから沈めずにいる白き浴槽
尾崎飛鳥 新しいことをはじめる時いくつになっても小学生のわたしだ
南 美桜 