音忘信

少年は雲を見ていた 母親はそれを大切そうに見ていた

0
塩本抄

もやひとつずつ手触りを確かめてから雲にする 電話をかける

0
袴田朱夏

あの雲の高さから落ちたにしてはやさしい雨だ さよなら、ディラン

0
恋野つづる

雲と雲 ほつれた空を縫うように青いカンバス翔けるジェット機

0
冬野水槽

蝉の殻 痛いくらいの群青に薄れていったきみという雲

0
野添まゆ子

ピュアそうな真白き雲のある空は大人みたいだ本音が見えない

0
ひーろ

靴紐は不死鳥に似て何度でも結びなおせる 湧きあがる雲

0
てる

雲のない遥かな空の上澄みを光矯めつつ遁げてゆく翳

0
まつたく

冬雲の重みを感じベランダへ「泣きそうね」って俺のことかよ

0
uvm

すじ雲を見上げて吸った吐くために時刻通りのバスは見送る

0