北大路真彦

北大路真彦

手羽先の油の指をおしぼりで何度拭くやら霜月の宵

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北大路真彦

浜辺には朽木ひとつが転がりて口笛吹けど掠れ消えゆく

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北大路真彦

爪の先欠けて何度も擦る夜泣く母の背を思ひだす夜

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北大路真彦

どの朝も黒く涼しくただ我を迎へり遠き汽笛とともに

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北大路真彦

泣きもせず笑ひもせずに腕の無き人形庭の枯葉と燃ゆる

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北大路真彦

秋ひとり甘く煮られた大根を噛めば木枯し燐寸の匂ひ

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北大路真彦

天窓のぼんやり白き日光に透かす手紙は葡萄の匂ひ

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北大路真彦

夜を仰ぎ黒き天より降りて来し冷気に顔の熱さを溶かす

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北大路真彦

寿司つまむ箸を両手に持ち替へて鬼の真似せし遺影の亡姉

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