小野りす 小野りす
小野りす
小野りす 黄ばみたるかるき鍵盤ふすふすと祖母のオルガンの息やはらかし
小野りす 艫の灯と艪を掻く音が分かちゆくきみのみづうみわれのみづうみ
小野りす 海中(わたなか)に都はありやいくたびも夢の瀬戸にてふなべりを越ゆ
小野りす スターバト・マーテルすべての母たちのあをきかなしみ空にかへさむ
小野りす 終りなくはじまりもない円環を編むひとの手に雪にほふかも
小野りす 水仙にかほを寄せたりくわんおんの白き指さきにふるるがごとく
小野りす ひとはみなこの世の過客 花陰に手を振りあひて別れてゆかむ
小野りす 半身を失くして泳ぐうつし世の小(を)暗き水に出口は見えず
小野りす 