
海紀亜


願ってもむなしいものだと知ったから 恋をせずともわたしはうたう

眠れない いつかのために 波と風 小鳥の声を 切り取っておく

上を目指し続けなくてもいいんだよ てんとう虫の午睡の時間

昨日より綺麗に剥けた茹で玉子 明日が良い日になりますように

換気扇消してベッドで丸まって 冷蔵庫の鳴き声を聞いてる

ほんとうは虚しい恋だと分かってる 未来が無いとわかってるのに

両の手で 寿命の尽きた魔法瓶のからだのぬくみを受け取っている

心など誰も持たぬと云うあなた 失ったのは持っていたから
