
甘森太一


ブレーキのほとんど効かない自転車で下るみたいな恋だってする

初デートに富士急ハイランドのきっと心尽くしとしての絶叫

ねえセクシャルバイオレットNo.1 あなたの夢にいっちょ噛ませて

階段の子らの足音軽くなる五線譜跳ねる音符のように

「きりつ、れい、ちゃくせき、おはよーございます」とりどり光を湛える蕾

〈おしとやかマシーン〉か私 会議中なにも言わずに微笑んでいて

山盛りのポテトは萎びて薄暗い実家の風呂場になめくじ二匹

短歌では嘘もつくけど短歌には嘘をつかない 愛されもしたい
