咳ひとつ出すたび口偏が剥がれ落ち亥だけになった文字が転がる
題『咳』 にて
世界中の差が消えたら羊という字だけ残ると誰かが言った
題『差』 にて
「また明日」その続きがある前提で僕らは靴の紐を結び直す
題『続』 にて
青信号が点滅するたび世界は僕を置いていく準備をする
題『自由詠』 にて
温かいままで渡された缶の中に今日の終わりが入っていた
題『温』 にて
知っているふりの角度で立つ午後 質問だけが深呼吸する
題『知』 にて
「チョコ食べる?」その一言の裏側に隠した熱を君は知らない
題『チョコ』 にて
こたつ越しまだ言わぬこと挟みつつみかんの皮だけ丸くなりたる
題『こたつ』 にて
一歩だけ下がれば済んだはずなのに歩道の端で影を踏んでる
題『歩』 にて
日記帳鞄の底で息をする消した頁の影だけ増えて
題『記』 にて
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