
2023-03-26


あの日から麻痺したまゝの指先でそっと奏でてみる「春よ、来い」

地震(なゐ)ありて地図を取り出し見つめたるあの日の波を如何(いかに)か忘れむ

広口のカップを置く貴方が微笑む赤味帯びる琥珀揺れ花の香

火に懸かり口開けもがく蜆らの悲鳴を湯の立つ音がかき消す

破壊する人類なにゆえ生み出した自然の意図を教えてくれれば

ね?と問うと、ぽつりぽつりとこだまする。逆さの闇と、ランタンと雨

霧深き泉の向かいに鹿二頭。空は雨でごろろと言ってる

蕎麦を打つ禅するように粉を見つめ問答無用の手打ちの仕上げ
