
2023-06-27


月に口づけされている夢を見て ああ 亡くなったのねあの人が

ぱっちりと揃えた爪でかき鳴らすギター あなたの帰らない部屋

生きているだけで頑張っているって言われて曖昧に頷いた

剥き出しで涼むセフレに鏡越し「汚れつちまつた悲しみ」を説く

あなたから逃げた私の愚かさは新幹線で運ばれていく

讃美歌の少女しばらく見ぬうちにピアスをつけ始めてまた冬

「あっオリオン座」とたぶんあなたは呟いてそれを最後と決めたのでしょう

ふるさとの風の匂いに似て 強く抱き締めあったあの人の髪
