夏衣 透けた肌から匂いたつ隠した想い見透かされそう
題『自由詠』 にて
塾帰り 迎えの母にほっとする少女が降りた暗いバス停
題『帰』 にて
鍬いれる人もとだえて 若草のみどりの海に白いすいせん
題『白』 にて
花吹雪 違う未来へわかれ道「またな」と上げた左手の指
題『手』 にて
寝もやらずかすむ月影ながむれば音もなく散るや春の夜の花
題『音』 にて
あといくつ春に逢えると独り言 祖母の白髪にふりかかる花
題『春』 にて
髪に添う花のひとひら散りそめてひとよ宴のはかなさに酔う
題『髪』 にて
のんびりと巡礼道のわたし船 猫が見送る釣り人の横
題『送』 にて
豆を煎る母の背中の年月に祖母の影見るおはぎの香り
題『甘いものを読み込んで』 にて
ただいまとコートを脱げば樟脳のかおりほのめくぼんぼり回る
題『自由詠』 にて
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