来世とふ言葉おぼえて「らいせにはうまくできたらいいね」と子が言ふ
題『世』 にて
失敗といふ道はなくお使ひを頼まれた子が見てゐる夕陽
題『使』 にて
もうすでに遅刻してゐて大国の密使のやうにひそやかに出る
題『使』 にて
まだ歩く わたしの夜空を流星がいつとほるかはわからないから
題『星』 にて
まだ息のしやすい駅を後にして惑星探査だ朝の電車は
題『星』 にて
この街は夜がうるさい 豪雨後のサッカー場の芝生をおもふ
題『サッカー(テーマ詠)』 にて
あてもなく歩けど服をざばざばと洗ひたくなる川に着きたり
題『川』 にて
すみずみにひかりを受けて指吸ひをやめたわが子のおほきな一歩
題『吸』 にて
独り居の夏の手引きに加へたり熟れゐる桃を切る感触を
題『手』 にて
夏の日の長さを思ひだすときのゆふやみが顔をとほざけてゆく
題『夏(テーマ詠)』 にて
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