北大路真彦

北大路真彦

波もなくただ空映す海面を墓地より眺む午後二時の猫

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北大路真彦

雨やまず夜との境見えぬまま手探り朝をかき分け歩く

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北大路真彦

泣きながら青き小花を踏みつける二度とここへは誰も来ぬよう

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北大路真彦

かき氷メロンシロップ啜り飲み「今朝まで生きていた」とぞ泣きぬ

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北大路真彦

風鈴に「忌中」の紙をぶら下げて鳴らす簾を通る涼風

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北大路真彦

磨硝子隔て冷たき幽霊を夏の真昼の光に透かす

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北大路真彦

雨やまずただ冷えてゆく味噌汁の鍋午後からは葉書を書かむ

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北大路真彦

松葉杖突きし男児の背を追ひて傘差す母の背も濡れてをり

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北大路真彦

老ひてゆく鏡の我は泣きもせず敗戦記念日ただ髯を剃る

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北大路真彦

朝ひとり饂飩を煮込む鍋の湯気神在月の暦に染みぬ

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