逃げ水を追う炎天のひとり旅 おのれ呪えど神はうらまず
題『水』 にて
熱くなることを忘れたフィラメント 切れる痛みも知らないけれど
題『暑・熱』 にて
油あがりの春巻かじりハヒフヘホ 汗かくジョッキ 喉鳴らす夏
題『春』 にて
転生の欠片ひとひら胸にあり 知らないはずの路地が懐かし
題『転』 にて
ありふれた日々をたとえば明と暗 どっちでもない場所に棲む僕
題『明』 にて
アリバイを紡ぐダミーの日記帳 空白だけが嘘を知ってる
題『嘘(テーマ詠)』 にて
鉄橋はやがて星へのカタパルト まどろむ夜汽車 轟音置いて
題『橋』 にて
プチトマト 黄花をさけてわき芽摘む 手に青臭く夏の香ぞする
題『手』 にて
初産の妻は愛しく語りかく 君だったのかお腹蹴ったの
題『君』 にて
泣きながら兄の名を呼ぶ妹よ クラスメイトの集まる廊下
題『兄』 にて
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