袴田朱夏 回文短歌
袴田朱夏
秋鵠空(さとあき) 蓑虫舌もなく鳴くならず訪ひ人すらなく泣くな黙ししむのみ
秋鵠空(さとあき) 春ひとり香開く曲り旅に日にひたり鎌倉光りと昼は
秋鵠空(さとあき) 梓実の昨日の門解きし夏至ただし 景色ととのふ芒の今朝咲き
秋鵠空(さとあき) 虫の音の小庭をつたひて 樹々の葉の訊きて日経つを 葉にこの音のしむ
秋鵠空(さとあき) 黙球恋ひ浮雲そこ捜せ彼の日恋ひ野風かさこそ黙球飛行機雲
秋鵠空(さとあき) 抜け手綱期するは晴れの二鳫紋 彼に乗れば「春過ぎ夏闌けぬ」
秋鵠空(さとあき) 傘があの遠ざかる音問ふの間のふと通る傘音の赤坂
秋鵠空(さとあき) 神楽坂宵の雨澄む坂の地の傘、娘あの日よ傘落花
秋鵠空(さとあき) 