塩本抄

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休園の終わりを示す家庭用ジャングルジムに掛かった布団

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穏やかな暮らしのためにスポンジでつめたく擦るシンクのぬめり

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内陸の冬に触れたる友の云うぴしぴし寒いを撫でてみる 風

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雪解けのように起きれば終末で夕焼けをただ浪費している

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帰る父と帰らぬ父のいて帰る方だけ出世していく社会

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容疑者の素顔をやたら知りたがるテレビの人の化粧が厚い

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婦人服売り場の眩しいきみどりよ黙っていても春は春だね

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良い絵だと今でも思うその人を好きから遠い星で見てても

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夜勤あけの朝陽は缶に反射して鯖の水煮のたしかな塩気

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岸辺から言葉をひとつみずうみに浮かべ波紋が消えてゆくまで

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