古本屋に特価の札を付けられて一巻欠けた全集並ぶ
題『全』 にて
全身を雨に打たせて歩きゆく先も見えない荒野の道を
題『全』 にて
口を開け白目を剥いて眠る人向いの席に夜の地下鉄
題『白』 にて
白球は入道雲にぐんぐんと飛んで真夏の終わり近づく
題『白』 にて
貸した時よりも綺麗になっている君から返してもらうハンカチ
題『もらう』 にて
もらうものもらってしまえば貴方には用はないのよ行ってどこかに
題『もらう』 にて
空々しい言葉を互いに掛け合って結論を出す現状維持と
題『空』 にて
空き缶に名前も知らぬ花挿して亡き人思うわが盆祭
題『空』 にて
どぶ川に浮んだ泡が消えるように都会で描いた夢も消えたり
題『泡』 にて
泡を吹く蟹をいじめて子供らが喚声上げる暗き岩陰
題『泡』 にて
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