悲しみを甘さとした大根入れた朝のスープをなみなみと盛る
題『朝』 にて
朝っぱらから喧嘩して電車に乗る地底に沈む重石の重さで
題『地』 にて
ぷっくりと煮えた花豆を極上の甘露の一滴のように掬う
題『甘いものを読み込んで』 にて
ありがとう岩手日報に包まれた蕪に声かけし母の荷を解く
題『ありがとう』 にて
瞼閉じ泣きたい気持ち冷ますように寒風に襟元を預ける
題『寒・冷』 にて
闇よりも暗い家々のシルエットに灯り揺らめく月のない夜
題『自由詠』 にて
杉載せる雪の冠思い出の降誕祭のケーキのようで
題『祭』 にて
ふるふると伸びる雨の子指で追う三号車5番A席の窓で
題『三』 にて
傘持って魚と同じ湿り気の鱗整え行く朝の電車
題『動物を読み込んで』 にて
今日生きた証尋ねても言い淀む湯面を手でたぷんと揺らす
題『言』 にて
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