もう伸びぬ曲った腰の母親がちんまり座る早春の部屋
題『母』 にて
馴れ合いの部屋の空気は生温く窓開け放つ風よ吹き込め
題『温・暖』 にて
泣き声のごとき音たて停車した最終電車に眠り込む人
題『泣』 にて
剥離して悶え苦しむトタン屋根 雨に打たれる廃屋の夜
題『離』 にて
やわらかな羽毛のような感触の春の風来る丘の上から
題『触』 にて
木の枝に着いた雫の呼鈴がキラリと光り春の訪れ
題『着』 にて
日輪を突き刺すごときくろがねの鉄塔去りゆく冬を見送る
題『日』 にて
どこにでも転がっている石ころのように都会の隅に暮らしぬ
題『どこ』 にて
どこからかほのかに春の香りして鼻をクンクンさせている猫
題『どこ』 にて
チョコチョコと横から口を差し挟むほっとけこれが俺のやり方
題『チョコ』 にて
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