八木辰

終電の座席を奪う容赦ない獣に至る命の歴史

腹が鳴き虚ろに明日をおもうとき逞しくもあるサッポロ一番

猫語など翻訳せずに安らげよ人の言葉を猫語に濁せ

ニコニコとしなびた心に鬼を積みトーテムポール調避雷針

都合よく「綺麗ですね」と人間に利用されてる明かりこそ見よ

目をつぶり日差しに揺らぐ雑草らと時刻表のない駅に立つ

カレーにはちくわをいれる母親の文化人類学的思考

寝付けない夜は読書と心臓の休符の方を愛しています

揖保乃糸とはいのちです換気扇から湯気を浴び草はぼうぼう

カサついた指を吐息でぬくもらし耳をすませば鳴る消防車

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