お題 作者非表示 ※作者非表示※『実家（テーマ詠）』 お題 2023.12.30 作者を非表示にした歌会形式です。 ・投稿期間はお題発表から5日間！・短歌は投稿後15分間は編集が可能ですが、十分に確認の上、ご投稿ください。・トップページの注意事項をご確認のうえ、お楽しみください。
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東京と全然違う星空を着ぶくれ親子は庭で見上げる
実家だった場所は駐車場に変わり枕の位置に停めるエンジン
立派だと祖父母が誉めてくれるから会社を辞めたことが言えない
十八で出た時の部屋そのままで並んだ漫画つい読み耽る
重箱を詰めつつそっと切れ端を私にくれる母の習慣
誰もいない炬燵が一つ真ん中に父母ふたり幻がある
今はなき 実家への道 辿らんと 迷い迷いて 少し悲しや
小さめの洗面台に現役の幼稚園児が使ったコップ
北からの荷物を解けば切り餅が新聞紙の中冷え切っていて
ふるさとは東京この街の空気が一番澄んでいる大晦日
四十年前に新築した家も一緒に年を取ったと気づく
外国のことかのように東京を敵視している叔父が来ている
ただいまと言って帰ってきた場所なのに
「ひとんちの匂い」私異邦人
スーパーの大きなお寿司とおつまみとお酒とマリパ 除夜の鐘待つ
舌癌を克服したる兄元気 秋にもなれば稲穂の実る
親からは独立しろと言われても実家に住み着く四十路の私
お帰りと母かと思う義姉の声帰省の客に年越しの蕎麦
母も逝き廃線のはるかあばら家のごめんと笑い明日墓じまい
年末の家主不在のリビングで時計の音とチラシを広げ
ピンと張る母娘（おやこ）の糸がゆるむ今 晴天の下（もと）、我が家雪解け
傍らにあなたがいるこのしあわせを飲み干しているこの盃（さかずき）で
ダンボールの中に閉じた思い出が開ける前から開いてる
雪国に育ち都会で頑張る人には
実家の母の笑顔が力
帰省して言う頃合いを見計らう「そろそろ免許返納したら？」
幾年も故郷（こきょう）なるもの憧れて見上げれば星、同じところに
無くすには惜しいが背負うに重すぎて付かず離れず気付けば三十路
疲れたら 実家に帰って 母の飯 レトルト食品 笑って喰らう
昔人 星を頼りに 帰路を行く 海山越えて 父母待つ家へ
顔洗う水が頬刺す冷たさよ
薄日も差さぬ山陰の里
後ろからカートの音が聞こえてる変わらぬ町にまだ向日葵が
転々と幼い頃から借り暮らし強いて言うなら今いるとこかな
夢の中家族のうちの一人でも出てくる度に気もそぞろなり
竿の跡柱の傷を懐かしむ箪笥の上の古びたラジオ
食料やライフラインのある家で歌詠むことの意味考える
家にいれば女に休みなどなくて２泊３日のホテルが実家
チャンネル権を持たせてくれる年二回訪ねるほどの義実家だけど
家を出る夢叶わずに父親を看取り私も年老いていく
鴨居には代々見つめる遺影アリどの代からカラーになるかな
猫が寝て私も眠る守られているような日だまりの子供部屋
寝て起きて餅を食らって亡き父の遺影の前に並べる御節
義実家の床に転がるビー玉が足の痺れを見透かす晦日
同じ町、同じ町へと引っ越して旧居の主は不動産へと
卒寿超え父母が施設へ入居して残った家を息子が処分