2023年10月
素敵な歌を作るためには
良い作品を生み出すためには様々な方法があると思います。
1.具体性
良い歌は読み手の頭の中に映像を浮かび上がらせることに成功していると思います。具体物を上手入れることで歌は良くなるはずです。
2.理のないリアリティ
論理的には結びつかずとも、景と情が適度な距離感で結びついていることは良い短歌になる一つの要素だと思います。適度な飛躍や、無理のない連想がポイントだと考えています。
3.想いを託す
読み手がいることを忘れない。読み手が受け取って短歌は完成する。カッコつけたフレーズや、読み手が置いてけぼりな表現は敬遠される理由になります。
創作のヒントになれば幸いです。
評価を集めた歌
題『風』
たんぽぽであれば恋などしなくても風に命を託せるものを
題『季節(テーマ詠)』※全首評
泣くひとを海が年中受け入れて季節はずれのかなしみはない
題『夜』
十回目のナースコールにひたひたと夜と朝との隙間を歩く
題『人称代名詞を使わずに』
寄せ鍋の作る蒸気が賃貸の冷たい部屋を温めていく
題『海』
助手席に舞い込んで来た赤とんぼ 海へ行こうか満タンにして
題「自由詠」
押し入れの中で寝ていたお布団をベランダに干し起こしてやった
題『即詠』
遠くから呼ぶ声がして振り向けば誰もいない日、朝から雨の
題『自由詠』
生きるとはいつまでを言う瑞々しく果汁溢れる梨の切り口
題『テレビ(テーマ詠)』
モノクロのパリの街から韓流へリモコン片手母は旅する
題『海』
「君と歩く波打ち際…」と詠んでみる海無し県に住んでるくせに
題『海』
飛ぶかもめ空と海とを縫いあげてゆらりふわりと遊び戯れ
題『秋(テーマ詠)』
できるなら靴を履かないどうぶつに生まれかわって秋の坂道
お題『今月の自薦一首』
三人でまずは山葵を擦りおろすみな告白を持ち寄りながら
お題『今月の自薦一首』
澄みきった青き空にはいわし雲更なる果てに白き半月
題『人称代名詞を使わずに』
三段のチェストの中に閉じ込めた冬が出て来た今朝ひとつ目の
題『金』
キンモクセイ無数の花がこぼれ落ち香り漂う金の絨毯
題『時事詠』
この星は宇宙人でも攻めて来りゃひとつになるか映画みたいに
題『風』
公園の落ちたばかりの葉が風に乗る練習を繰り返している
題『季節(テーマ詠)』※全首評
「大丈夫ですか」と問われ「大丈夫です」と答えた春の床屋で
付句『音楽が慰めになる』
音楽が慰めになる言葉には出せない心のすべて音色に
題『終』
一日の終わりにひとつ大欠伸 何も思わず 何も思わず
題「自由詠」
寝る前に言葉を探す5分間 歌のかけらを書き留め眠る
題『夜』
ふうせんは青空めがけ翔んで行く夜になったら星になるため
題『赤・紅』
声変わりのよう少しずつ赤に茶に秋は静かに色づいていく
題『長』
地上まで夜空を延長するために星のひかりを真似る街灯
題『自由詠』
夜空には雲におぼろな一つ星 まだこれからだ歩いていこう
題『自由詠』
五段階変速付きの自転車できみは五つの風をあやつる
題『スマホ(テーマ詠)』
夜中まで見つめ合ってたはずなのに 認識しない寝起きのわたし
題『人称代名詞を使わずに』
青空が驚かないよう少しずつだいだい色を注ぐ黄昏
題『人称代名詞を使わずに』
軽やかな歩みを魅せて横切ったハクセキレイの白黒模様